政治改革だけが争点ではない。与野党には、政治浄化だけに議論を集中させるのではなく、政策とそれを実現する力を判断するための材料を示さなければならない。
第50回衆院選が公示された。本県では選挙区に前職5人、新人6人が立候補した。このほか本県関係で前新3人が比例東北単独で名簿に登載された。
石破茂首相は、勝敗ラインについて自公で獲得議席が過半数との認識を示している。野党第1党の立民は政権交代を目標とする。裏金問題などにより、自民に注がれる有権者の目は、政権を奪還して以降で最も厳しくなっているのは間違いない。これまで以上に、政権選択の意味合いが濃い選挙だ。
しかし、石破政権は発足から2週間しかたっていないことに加え、選挙に政策活動費を使うか使わないなどの議論に注目が集まってしまっている。自民の公約集は最初の項目が「ルールを守る」というのも、立法府の与党として甚だおかしい。政治改革への取り組みに加え、経済や財政をどう健全化していくかなどの具体的な方策を論じてほしい。
自民関係者からは公約に掲げた政策が煮詰まっていないのは「政権発足から時間がなかったため」との声が聞こえる。しかし、その日程で解散したのは石破首相であり、言い訳にはならない。
例えば、税制を巡っては野党が減税を掲げるのに対し、自民は「安定した財政基盤構築の観点から、税制見直しを進める」としているのみで、具体的な政策への言及は薄い。自民が示すべきは、その税制見直しをどう進めるかだ。
政策で勝負すべきなのは、野党も同様だ。減税を主張するのであれば、税収減をどう補うかや、どの分野の政策を縮小させるかまで言及しなければ現実味は伴わず、票狙いの公約の範囲にとどまる。
さまざまな不祥事が表面化しながら自民1強の状態が続いてきたのは、有権者が野党に政権を任せられないと判断してきた結果だ。そのことを野党は直視すべきだ。
自公が過半数割れした場合の政権構想については、立民以外の野党もその考えを示す必要がある。新たな政権に入る考えがあるのか、その場合にどのような枠組みを想定しているのかなどを明らかにした上で審判を仰がなければ、有権者の適正な判断を妨げることになってしまう。
きょうから期日前投票が始まる。どの候補者、どの党に票を投じるのがより良い未来につながるかを考えて、必ず投票所に足を運んでほしい。