新聞週間が21日まで展開されている。折しも衆院選に重なった。中立、公正な選挙報道で有権者の判断に資する情報を届け、信頼に応えていくことを誓う。
約1万編の応募作から選ばれた新聞週間の代表標語は「流されない 私は読んで 考える」だ。真偽不明の情報や悪質な偽情報がインターネットを中心にあふれるなかで、新聞を読んで自分で考え、意見を伝えることが大切との思いが込められている。
対話型人工知能(AI)「チャットGPT」などの登場により、誰でも画像や音声を加工して偽情報を作れる時代となった。米大統領選をはじめ、国内外の選挙で多くの偽情報が拡散した事例が確認されている。衆院選でも交流サイト(SNS)などネット上の選挙情報への注意が欠かせない。
SNSなどには利用者のデータを解析し、好みの情報を届ける仕組みがある。ネット情報に依存していると、自身と同じ声が増幅され、違う声がかき消されていく「エコーチェンバー」などの現象に陥り、主義主張が先鋭化しやすくなると指摘されている。
偽情報や情報の偏りによって、民主主義の基盤である選挙がゆがめられる恐れがある。取材に基づく正確な記事と、ネット上にあふれる情報の真偽を見抜くすべを有権者らに提供するのは、新聞社に課せられた重要な責務だ。
主義主張が先鋭化した先にある社会の姿の一つが、排外主義だろう。近年、欧米など多くの国で台頭している。民主主義は完璧ではなく、時に民意によって分断が生み出される恐れがあるのは、日本も変わらない。
だからこそ異なる意見を排除せず、公平公正な選挙などを通じて議論を深め、社会の課題を解決できる土壌を育むことが絶えず求められている。その取り組みに報道機関として貢献していきたい。
衆院選は日本のかじ取りをどの政党に託すかを決める重要な機会だ。各政党や候補者だけでなく、新聞社としても有権者に判断材料を届けるべく、政見などを分かりやすく整理して掲載している。
紙の新聞は速報性ではテレビやネットに劣るかもしれないが、一覧性や記録性に優れている。複数の新聞を読み比べ、争点を多角的に捉えることで考え方の幅を広げることができる。
選挙ではさまざまな意見に耳を傾け、自分の意思で1票を投じることが肝要だ。18歳になって初めて投票に臨む若者だけでなく、子どもの主権者教育に新聞を活用する契機としてほしい。