古くて新しい病気とされ、決して油断できない。早期発見で感染拡大を防ぐ必要がある。
郡山市の高齢者施設で34人が結核に集団感染した。このうち4人が発症し、この施設とは別の市内の医療機関に勤める男性職員1人の発症も確認された。
市はこの医療機関で男性職員と接触した約2700人を対象に計10回の説明会を開いた。急きょの開催にもかかわらず約1200人が出席し、配信動画の視聴者も650人を超えた。
結核はせき、くしゃみから排出された空気中の結核菌を吸い込み感染する。感染しても発症するのは10人中1、2人だが、感染してから菌が体内で生き残り、数十年後に発症する人もいる。
人やものを介した接触感染はなく、結核菌を吸い込んでも必ず感染するものではないが、接触者やその家族らの不安は大きい。市は接触者らの感染の有無を確認する血液検査を迅速に進めるなど、対応に万全を期してほしい。
初期症状は風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどに似ている。自分が感染していることに気付かず、周囲の人にうつしてしまう可能性もある。せきや微熱、体のだるさが2週間以上続いている場合などは、早めに医療機関を受診することが大切だ。
国内の結核の流行は明治時代から始まり、1950年まで毎年10万人以上が亡くなっていたが、その後、治療薬の普及、衛生環境の向上で患者数は大幅に減少した。
日本は2021年、10万人当たりの新規患者数が初めて10人を下回り、世界保健機関(WHO)の分類で「低まん延国」に位置付けられ、欧米並みの水準になった。
それでも年間で約1万人が新たに発症し、千人以上が亡くなっている。県内でも昨年、93人の新規発症者が確認された。高齢者が多く、80歳以上が国内の発症者全体の4割を占める。結核が多かった戦前から戦後直後に感染してしまった人が高齢となり、免疫力の低下などで発病するケースが多いとみられている。
結核は肺などに症状が現れることが多く、自覚症状がない段階でも胸部エックス線検査で発症を発見することができる。高齢者や持病などで免疫力が落ちている人は定期的に検査を受け、結核の兆候の有無を確認してほしい。
国内では罹患(りかん)率の高いフィリピンやベトナムなど外国出身の患者の割合が増えている。国内の流行を防ぐためにも、国などは外国出身の発症者が円滑に医療機関を受診できる体制を整えるべきだ。