【10月26日付社説】衆院選・災害への備え/現場の力高める議論尽くせ

10/26 07:55

 南海トラフ巨大地震や首都直下地震など国難級の災害の発生が懸念されている。各党、候補者は危機感を強め、防災・減災対策を論じなければならない。

 各党が防災対策の強化を訴える中、焦点となっているのが危機管理体制の在り方だ。内閣府が中心の現体制は、被災自治体が省庁ごとに支援を要望するなど縦割り行政の弊害が指摘されている。平時から備えを推進する上でも、新たな司令塔が必要との意見がある。

 自民、公明の両党は防災庁の創設を公約に盛り込み、野党ではれいわ新選組などが防災省の創設を掲げる。立憲民主党は危機管理・防災局を設置すると訴えている。

 新組織の創設には「屋上屋を架すことになりかねない」との慎重な見方がある。新たな体制の構築により、どう対策が進むのか中身が問われている。各党は最後まで議論を深めることが重要だ。

 能登半島地震で改めて突き付けられたのは、被災者が体育館などで雑魚寝せざるを得ない避難環境の質の低さだ。東日本大震災などを経験し、各党は対策の重要性を繰り返し唱えてきた。それにもかかわらず、避難所の改善や被災者支援の取り組みは進んでいない。

 要因の一つとして指摘されているのが、自治体の担当者が異動するため、専門性が蓄積されにくい構造的な問題だ。市町村単位でみれば災害はたまにしか起こらず、人員や予算も割かれにくい。

 自治体だけで対応が難しいのならば、専門性のある民間組織を活用する必要がある。公明は災害関連死を防ぐため、リハビリ専門職を災害法制に位置付けると公約した。立民は、民間や自治体などでの「スペシャリスト職員」の採用と養成に取り組むとしている。

 自民などは災害対応での女性参画などを掲げるが、既存の施策の延長線上にとどまるものが多く、現場の体制を抜本的に改善できるかは不透明だ。対策の法制化を含め、党が掲げる公約の実効性をどう担保するのか語ってほしい。

 各党は防災力向上へ老朽化した道路や橋、上下水道などの整備を公約に掲げる。重要な対策だが、人口減少下で予算が限られる中、全てのインフラを維持するのが適切かどうかは考えるべき課題だ。聞こえのいい政策だけを述べて論戦を終えてはならない。

 あす投票日を迎える。経済の低迷や人口減少などの課題が山積する中で、防災・減災対策が埋没することのないよう、どう優先順位をつけて進めていくのか。各党、候補者には説明を尽くし、審判を仰ぐことが求められる。

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