新政権発足から26日後の投開票となった第50回衆院選は、与党の自民、公明両党が議席を大幅に減らし、過半数割れとなった。「国民の信任を得て、政権の掲げる政策の後押しをお願いしたい」としていた石破茂首相に対し、有権者は厳しい審判を下した。
与党の敗因は自民党派閥の裏金事件に端を発した「政治とカネ」の問題であることは明白だ。公示直前まで揺れた公認問題、非公認候補が代表を務める党支部に2千万円の活動費を支給していたことも自らを追い込む形になった。
自民は裏金事件の責任を取って退陣を決断した岸田文雄前首相に代わり、新政権で刷新感を打ち出そうとした。しかし危機感の希薄さ、有権者との意識の隔たりを露呈し、不信は拭えなかった。
長く続いた「1強他弱」の構造は崩れ、石破首相の責任論が強まるのは必至の情勢だ。公明党に加え、一部の野党などを取り込む形で連立政権の枠組みを拡大する動きが想定される。まずは選挙結果を真摯(しんし)に受け止め、権力闘争や党利党略に走ることなく、国民の信託に応えるべきだ。逆風下で当選した議員らの真価が問われる。
野党第1党の立憲民主党は議席を大きく伸ばした。公示前の3倍以上の議席を得た国民民主党も存在感が増すだろう。ただ政権交代を訴えてきた各野党は、与党批判を前面にする戦略を徹底しただけに、具体的な政策や政権担当能力を有権者に示し、支持を得られたとは言い難い。
野党が衆院で過半数を超えたとはいえ、政党間の政治姿勢や政策の隔たりは大きい。政権交代を実現したとしても、参院は自民、公明が過半数を確保しており、「衆参ねじれ国会」に直面する。
物価高に苦しむ国民生活、不安定な国際情勢などを見れば、政治が機能不全に陥る状況は許されない。政治改革も与野党の垣根を越え、すぐに断行しなければならない。野党も責任政党として責務を果たしてもらいたい。
県内は定数が1減となり、区割り変更後初めての選挙だったが、四つの小選挙区のうち1、2、3区で立憲民主の前職が勝利し、4区は自民新人が初当選した。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から13年半が経過し、今回の選挙では本県の復興について激しい論戦が交わされることはなかった。しかし今も2万人以上が避難を余儀なくされ、原発の廃炉は難航している。解決しなければならない課題は山積する。各議員は県民の思いを国政に届け、復興を着実に前に進めてほしい。