自治体や金融機関などが密接に連携し、地域経済への影響を最小限にとどめることが急務だ。
県内企業の倒産件数が大幅に増加している。東京商工リサーチ郡山支店の集計によると、2024年度上半期(4~9月、負債額1千万円以上)は63件に上り、前年同期比で27件増えた。東日本大震災以降で最多だ。負債総額も90億円に達し、前年同期から36億円増加している。
サービス業や建設業、製造業などが多い。原材料価格や人件費の高騰、新型コロナウイルス対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済の本格化など、さまざまな要因が複合的に重なり、中小零細企業の経営を逼迫(ひっぱく)している。同支店によると、10月も前年同月の倍となる12件だった。
取引先の倒産に伴う経営悪化や連鎖倒産などが懸念される。消費や雇用など地域全体への影響も大きい。企業の自助努力に任せるだけでなく、自治体や商工団体は地元企業や業界の動向を注視し、資金繰りや離職者の支援など必要な対策を迅速に講じる必要がある。
中小零細企業にとって最も深刻なのは人件費の問題だ。物価高に伴う賃上げ機運の高まりに加え、働き方改革による長時間労働の制限などで人員不足が常態化しており、必要な従業員を確保するための人件費がかさんでいる。従業員やその家族の生活を守るのは大きな責務だが、人件費の圧迫で業績が悪化し、倒産してしまっては元も子もない。
大企業と比べ、価格転嫁が思うように進まず収益が低下し、人件費の原資の確保が難しいことも倒産の要因になっている。とうほう地域総合研究所によると、今春にベースアップを実施した県内企業は46%に上った一方、価格転嫁について「9割以上進んだ」とした企業は10・6%にとどまった。
原材料費と人件費の増加分を価格に反映させることが、中小零細企業の経営の生命線といえる。業績回復が顕著な大企業は、中小零細企業との価格交渉に適切に対応し、公正取引委員会などは価格転嫁に応じない企業への監視や処分を強化すべきだ。
コロナ禍などで過剰な債務を抱えてしまった企業は、業績が回復傾向にあっても、資金繰りに苦労している。新規事業への参入で苦境を乗り越えようとしても、資金を調達できず、断念を余儀なくされたケースもある。
金融機関などは融資先の状況に応じて適切にアドバイスし、経営基盤の強化や、新規事業への参入を支えてもらいたい。