JR東日本が山形新幹線に投入した新型車両「E8系(愛称・つばさ)」が、3月16日に営業運転を開始した。山形新幹線では25年ぶりの車両の"更新"。現在のE3系から順次切り替わる予定だ。山形新幹線車両センター(山形市)で車両検査を担う横山知樹さん(23)は「新しい風が吹き、地域に良い影響を与えてほしい」と期待を込める。
山形新幹線は1992年に東京―山形間で開業した。在来線(奥羽線)の線路幅を新幹線用に改良して車両の乗り入れを可能にした「ミニ新幹線」として注目を集め、99年に新庄(山形県新庄市)まで延伸した。
東北新幹線の車両との連結・切り離し作業が行われる福島駅では、新幹線と在来線を直通する連絡線「アプローチ線」の新設工事が進む。福島駅には連絡線が1本しかなく、山形新幹線の上下線とも東北新幹線下りホーム(14番線)に乗り入れている。新たな連絡線の完成によって上下線が分かれ、安定した運行が見込まれる。2026年度末の使用開始を予定する。
E8系の車体には蔵王の雪をイメージした白の「蔵王ビアンコ」や黄色の「紅花イエロー」を採用した。デビューから1カ月が経過した今も関心は高く、本県の撮影スポットには吾妻山などをバックにE8系の雄姿をカメラに収める鉄道ファンが後を絶たない。
横山さんが鉄道への思いを強くしたのは小学5年生のときだった。大病を患い療養中に両親に連れて行ってもらった駅での出来事。運転手が手を振り、汽笛を鳴らしてくれたことで勇気をもらった。
車両の損傷の有無や空調の確認など車両検査は多岐にわたる。「乗っていただく方に安全な車両を提供するため保守点検は欠かせない」と横山さん。沿線地域が、つばさを広げるように発展する姿を思い描く。(影山琢也)
E8系「つばさ」 最高速度は時速300キロで東京―新庄間の所要時間を最大4分短縮した。走行時の横揺れを軽減する「フルアクティブサスペンション」を全車両に設置しており、乗り心地が向上。全ての席の肘掛け下にコンセントを設けた。