【ふくしま乗り物語】白バイ 憧れ、使命感にかえて

11/04 08:45

県内の交通治安維持へ出動する隊員ら=福島市荒井・県警機動センター(吉田義広撮影) 【撮影情報】カメラ・ニコンD6、レンズ70-200ミリ、絞り値・f/8、  シャッター速度・1/1250秒、ISO1000
悲惨な事故を一件でも減らしたいと決意を語る小松巡査(前列左)ら

 交通治安の維持へ、目を光らせる県警白バイ隊。違反者を取り締まる厳しい姿勢に威圧感すら感じてしまうが、交通安全の啓発イベントでは青い制服と白い大型のバイクが子どもたちの憧れの的だ。

 隊員が所属するのは交通機動隊。隊長以下約60人の編成で、うち女性は4人。本隊のほか、県内6カ所に分駐隊を置く。使用するバイクはホンダ「CB1300P」。「P」は警察仕様を意味し、赤色灯やサイドボックス、無線機などを装備する。「警察車両は一般車両より速い」という、うわさも流布するが、性能を向上させる改造はしていない。

 隊員は日々、事故の発生傾向を踏まえて取り締まりをする場所を決めており、ヘルメットとバイク用エアバッグ、グラブなどを装着、1日200キロ以上走行する日もある。ハンドルの下に無線スイッチがあり、走行車両に停止を促す際は外部スピーカーに切り替える。

 出動前に欠かさないのが約15分の「慣熟走行」。気温や湿度は毎日異なる。自身の体調とバイクの調子を確かめ、グリップが利くよう、タイヤを温める。取り締まる側が事故を起こすわけにはいかないからだ。

 今春入隊したのは10年来憧れを持ち続けてきた小松加奈巡査(23)。イベントで白バイに乗車した小学校高学年のとき、隊員の姿に感動した。高校生でバイクの普通免許を、警察学校に入校してから大型バイクの免許を取得した。

 現在は先輩に同行して取り締まりにあたる。違反者への声かけや接し方など学ぶことは多く、車体が300キロを超えるバイクの操作に手こずることもあった。小松巡査には悲惨な事故を一件でも減らしたいとの思いがあり、取り締まる際、速度超過や一時不停止などが重大事故につながる危険性を切々と伝えている。「『今後気を付けます』と分かってもらえることが、うれしい」と小松巡査。白バイは走行するだけで注目を集める。「だからこそ、しっかり街中を走ることで事故抑止につなげたい」と力を込める。(影山琢也)

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 県警白バイ隊 県警交通機動隊の前身・交通機動巡ら隊は1960(昭和35)年に隊員20人で発足、67年に現在の交通機動隊となった。「交通戦争」と言われた時代で、県内での年間交通死亡事故の死者数が300人を超えるなど、交通治安が悪化していた。

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