戦後最大の冤罪(えんざい)事件「松川事件」を巡り、福島大は同大松川資料室で保管する一部資料を福島市のフォーラム福島に展示している。1966年の静岡県一家4人殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さんの半生に迫るドキュメンタリー映画「拳(けん)と祈り 袴田巌の生涯」の上映に合わせた企画で、冤罪事件の教訓や反省を広く伝えていく。展示は14日まで。
冤罪や再審法の改正に社会の注目が集まる中、松川事件にも改めて関心を寄せてもらおうと実施した。会場には無罪を言い渡した裁判長に関する資料や当時の新聞記事、支援する市民団体などが無罪を訴える中で作られた映画のチラシなど17点が並ぶ。冤罪の決定的な証拠となった「諏訪メモ」のレプリカも9日限定で展示された。
企画した福島大行政政策学類の高橋有紀准教授は「福島で冤罪事件があったことを知り、刑事司法に関心を持つきっかけにしてほしい」と説明した。会場を訪れた市内の女性(73)は「私たちが幸せに生きている中、(冤罪で)ずっと苦しんできた人たちがいる。松川事件について少し勉強してみたい」と語った。
松川事件は、東北線金谷川―松川間で49年8月未明、普通列車が脱線・転覆し、乗務員3人が死亡した。当時の国鉄と東芝の両労組組合員ら計20人が逮捕、列車転覆致死罪で起訴された。一審福島地裁で全員が有罪判決を受けたが、最高裁が差し戻し、最終的に全員の無罪が確定した。