福島医大が双葉郡8町村の自治体職員を対象に実施したメンタルヘルスに関する「震災10年目調査」で、重度の気分・不安障害に相当する「高リスク」と判定された職員の割合は全体の13%と、被災住民(6.1%)の約2倍に上った。震災と原発事故をはじめ、その後も相次いだ災害や、新型コロナウイルス対応などを背景に、自治体職員が深刻なメンタルヘルスの問題を抱えていることが浮き彫りになった。
医大災害こころの医学講座の瀬藤乃理子准教授(公認心理師)が15日、福島市で開かれた「支援者支援」シンポジウムで報告した。
調査は2021~23年、8町村で同意を得られた職員775人を対象に実施。「絶望的だと感じたか」「自分は価値のない人間だと感じたか」などメンタルヘルスを測る6項目の質問を5段階で尋ね、リスクを点数化して分析した。このうち重度の気分・不安障害に相当する「13点以上」は101人(13%)だった。13点以上の割合は、調査で比較対象とした一般人口の指標では3%、県民健康調査(21年度)による浜通り13市町村の住民では6.1%で、自治体職員の方が悪かった。
メンタルヘルスと、死にたいと考える「希死念慮」がともに高リスクと判定された職員は54人(7%)で、瀬藤氏は「すぐにでも医療的介入が必要」と指摘した。
要因としては、不慣れな業務や休みの取りにくさ、今後の見通しの難しさなどがストレスになっていることが明らかになった。自由記述では「毎年、『今年は正念場の年だ』と思っている」「まだ自立しないのかと言われることがある」などの意見があったという。
調査では、震災時から現在の職場(自治体)で働いている職員は35%にとどまることも分かった。職員自身も避難や転居を強いられていることや、高ストレスに伴う離職者の多さが背景にあるという。
瀬藤氏は「災害後に行政職のメンタルヘルスを守るには、内部の意識改革や外部からの支援、健康維持のための予算確保など工夫が必要だ」と強調。今後は、町村ごとの集計結果や特徴をまとめた報告書の全職員への配布や、高リスク者の多い町村での研修、行政職向けの動画作成など、対策を強化していく。