全国自治体の業務システムを統一するため、各地で進められているシステム改修を巡り、福島県内の複数自治体で業者側の対応遅れにより、法律で定められている2025年度末までの改修が不可能になっていることが18日、各自治体への取材で分かった。既存システムを使うなどの対応で市民生活に影響は出ない見通しだが、一時的なシステム構築を求められるなど県内の自治体は対応に追われている。
業者、人手不足
18日現在で、期間内に移行できない見通しだと判明しているのは県のほか、会津若松、福島、須賀川、伊達、古殿、棚倉、塙、鮫川などの市町村。郡山市などの自治体は影響を調査し、対応を検討しているという。
会津若松市では介護保険、後期高齢者医療、児童扶養手当、子育て支援の4業務システムの25年度までの改修が不可能となった。このうち2業務の移行可能時期については、業者が29年1月までずれ込むとの見通しを示している。残る2業務は未定という。
システム改修費に対する国の補助金制度は、25年度までに新システムに移行しなければ利用できない。会津若松市の担当者は「本来はやらなくても良いデータ連携などの業務が多くなり、職員の負担が増える。国に対し、補助制度の対応について要望を続けていく」と話した。
福島市は10月中旬に、1業務システムについて期限内の改修が難しいと連絡を受けた。担当者は「急な話で戸惑いもあるが、他の業務が(期限に)間に合うよう進めていくしかない」と語った。伊達市も10月下旬に改修が遅れるとの連絡を受けた。担当者は「準備が振り出しに戻ってしまった。システム移行が遅れれば国の費用補助を受けられず、市の一般財源から支出しなければならない」と頭を悩ませる。
デジタル庁と総務省は18日までに、自治体と改修の契約を結んでいる富士通と富士通Japanから、人員不足により25年度中の改修が困難との報告を受けた。両省庁は関係する都道府県や市区町村にこの状況を通知。期限内の新システム移行が困難と判明したら連絡するよう求めた。
県内のある自治体は業者から「システムが大幅に仕様変更するため、開発が遅れている」と説明を受けているという。
20業務、統一義務
県などによると、全国自治体の業務システムの統一は21年9月に施行された自治体システム標準化法で義務付けられた。対象は児童手当、生活保護など20業務にわたる。
各自治体がばらばらのシステムを運用している場合に比べ、国の制度改正に対応する各自治体の負担を軽減できる。自治体が他社のシステムに変更する際の負担も小さくなり、業者間の競争が生まれるため、コスト削減も期待される。