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ギャンブル依存に救いの手を 自死撲滅へ遺族会設立

10/04 08:50

「弟の話をすることで誰かの役に立てば」と話す服部さん。インターネットで気軽にギャンブルをできるようになっている社会への危機感もある

 ギャンブル依存症に苦しみ、自ら命を絶った人の家族が遺族会を設立した。設立に伴うセミナーが6日、福島市で開かれる。遺族会メンバーで、弟を亡くした服部善光さん(52)=郡山市出身=は「薬物やアルコールの依存症に比べて命を落とす危険が低いと考えている人が多いと思う。でも、ギャンブル依存症は死に至る病だ」と訴える。

 会は「ギャンブル依存症自死遺族会」。遺族6人が7月、当事者や家族を支援しているギャンブル依存症問題を考える会(東京都)内に設立した。遺族同士の支え合いや、ギャンブル依存症による自死撲滅に向けた啓発、国への対策強化の要望を目的としている。

 服部さんは2010年9月、弟=当時(37)=を亡くした。服部さん自身もギャンブル依存症当事者で、当時は回復施設に入所していたため、弟が死を選んだ経緯は亡くなってから知ることが多かった。

 弟は当時、パチンコなどのギャンブルによる借金の返済のため本業のほかにアルバイトを掛け持ちし、疲弊していたことは想像がつく。周囲の人から聞いた当時の様子や亡くなった状況から「本気で死のうとしたのではなく、周囲の気を引くための『SOS』だったのではないか」とも思う。

 弟は服部さんのギャンブル依存症に気付き、回復へのきっかけをつくった「救ってくれた人」でもあった。服部さんには「何かできたのでは」という後悔が残る。

 指標「LOST」

 考える会がギャンブル依存症の可能性を判断する指標が「LOST」だ。頭文字の4項目は【表】の通り。服部さんは「買い物に行くためお金を持って出かけると、気付いたらギャンブルをしている。コントロールが壊れて、当たり前のことができない」と説明する。

 考える会によると、依存症の人のうち自殺したいと思ったことがある人は6割以上、自殺を図ったことがある人は4割以上との調査結果がある。借金による生活苦や「またギャンブルをしてしまった」という罪悪感―。服部さんも命を絶とうとした人の話を聞く。「依存症と分からずに亡くなった人もいるのではないか」

 服部さんは15日で、ギャンブルをやめて10年になる。現在は当事者のための回復施設を運営する「東京グレイス・ロード」で働く。弟との違いは何だったのか。服部さんは「仲間の存在」と答える。「依存症になると借金などの問題で人間関係がぐちゃぐちゃになり、孤独になる。自助グループや回復施設で仲間と一緒に課題を解決していく必要がある」

 ギャンブル依存症への世間の理解は進まず、「自己責任」と見る向きがあると感じる。遺族として声を上げても「伝わらないかもしれない」という葛藤もある。ただ、命を守るために「死に至る病であり、回復できる病でもある」と伝え続けるつもりだ。(国井貴宏)

福島で6日セミナー 

 セミナーは6日、福島市のホテル福島グリーンパレスで開かれる。参加無料で事前申し込みは不要。時間は午後1時半~同4時。

 ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表や服部さんらが、ギャンブル依存症や遺族会の設立に関する思いを語る。精神科医の成瀬暢也埼玉県立精神医療センター副病院長が「依存症と自殺」と題して基調講演する。問い合わせは考える会(電話090・1404・3327)へ。 

自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口は以下の通り。

▽いのちの電話

 (0570)783556(午前10時~午後10時)

 (0120)783556(午後4時~午後9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

▽こころの健康相談統一ダイヤル

 (0570)064556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

▽よりそいホットライン

 (0120)279338(24時間対応)

 福島、岩手、宮城各県からは (0120)279226(24時間対応)

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