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富岡に来て良かった…ワタガシ感謝の13年 最後の舞台で有終飾れず

08/24 08:18

混合ダブルス準々決勝で敗れ、握手を交わして13年間の健闘をたたえ合う東野有紗(左)と渡辺勇大=横浜アリーナ

 2連覇で有終の美を飾ることはできなかったが、ペアとして最後の舞台で感謝の思いを表した。23日のバドミントンのジャパン・オープン混合ダブルス準々決勝で敗れた渡辺勇大(27)、東野有紗(28)組=BIPROGY、富岡高卒=は、富岡一中で出会い、ペアとなり13年を過ごした。日本では人気の低かった混合ダブルスをリードし、新風を吹き込んだ「ワタガシ」の戦いが幕を閉じた。

 「きょうで終わりが信じられない。本当に勝てない時期も一緒に乗り越えて、いい景色を見させてもらった」。東野は2人で歩んだ13年間を総括した。続けて渡辺は「ダブルスなので偶然ペアが決まったり、いろんな運を持っていた。この2人だからできた」と感慨深そうに振り返った。

 富岡一中時代、特定のペアがいない東野と、腰のけがで本調子ではなかった1学年下の渡辺の「余り者同士」でペアとなった2人。結成の裏側には、世界を見据えた「富岡」の取り組みがあったという。

 中学、高校時代に2人を指導した大堀均さん(56)=トナミ運輸ヘッドコーチ=はこう回顧する。「富岡で指導していたインドネシア人コーチが『なぜ日本は五輪種目なのにミックス(混合ダブルス)に力を入れないんだ』と。その一声で、中学からペアをつくって大会に出そうという話になった」。そのかいあって、早くからペアとなった2人が、まさに先駆者となり、時代を塗り替えていった。

 日本ではまだ人気が低く、「全日本総合選手権では決勝前に観客が帰ってしまうような時もあった」(東野)という混合ダブルス。2018年に100年以上の歴史を誇る全英オープンを日本勢で初制覇すると、21年東京五輪では日本勢初のメダルを獲得し、パリ五輪では2大会連続のメダル獲得も達成した。これまでに2人が打ち立てた”日本勢初”は数知れず、混合ダブルスを世界基準に押し上げ、人気の火付け役となった。

 最後の試合となった準々決勝は平日午後5時前の開始となったが、多くの観客がスタンドを埋めた。「『ワタガシ』の試合を見るまで帰れない」と、保護者にそう訴える子どもの姿もあった。「歴史をたくさんつくってきたし、レールを伸ばしてこれたと思う」。渡辺の言葉には混合ダブルスを引っ張ってきた自負が感じられた。

 大観客に見送られ会場を後にした。「富岡に来て良かった」。そう話していた2人はお互いに「ありがとう」と感謝の言葉をかけ合い、締めくくった。(佐藤智哉)

 東野、桜本と女子複 渡辺は田口と混合 

 東野は今後、桜本絢子(ヨネックス)と女子ダブルスで4年後のロサンゼルス五輪を目指す方針。渡辺は混合ダブルスを継続し、9月の全日本社会人選手権には田口真彩(ACTSAIKYO)とペアを組む予定となっている。

 恩師「新たな挑戦、楽しみ」

 渡辺、東野組が13年にわたるペア生活を一区切りとすることに、関係者は「まずはお疲れさま」と2人の努力などをねぎらった。

 2人の富岡一中(猪苗代中)時代に指導したふたば未来中監督の斎藤亘さん(52)は「少し残念な気持ちはあるが、競技生活が終わるわけではない。新たな挑戦でどんな道を切り開いていくか楽しみの方が大きい」と期待を込める。

 県バドミントン協会長の渡辺正光さん(67)は「2人ともそれぞれの舞台でこれからも頑張ってほしい」とエールを送った。

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